ようこそ人類、ここは地図。

私たちにおける、素晴らしい座標を

2017-01-01から1年間の記事一覧

朝吹真理子『きことわ』 文学小説って情報じゃないよ。

最近になって、2011年に芥川賞をとった朝吹真理子さんの「きことわ」という小説を読んだ。 いつまでも読み続けていられるような、にごりのない、透徹した文章世界に引き込まれ、切り取られた見知らぬ人の人生を、ほんの束の間生きて味わっているかのような心…

病を得るということは。

考えようによっては重たく、見る人によっては取るに足らない、そんな持病をこの二十年来、ぶら下げて生きている。 医者にかかって処方箋をもらうこともできれば、自力でなんとか見て見ぬふりの痩せ我慢をできないこともない。そういうたぐいのものである。 …

江國香織『落下する夕方』 落下したもの、喪失の色彩。

誰も帰ってこない12月の夜の部屋で、これを書いている。地球上は黒く冷えて、誰かの呼気で濡れた窓ガラスの内側には赤いカーテンがかかっている。巨大なストローを突き刺した形の加湿器がその細長い先端から滝のようにミストを床に吐き出し続け、中の水がな…

わたしは自宅待機の勇者。

旅に出たくないのには色色わけがある。 まずは遠方へ出かけるほどに住み慣れた屋敷から肉体が離れ、その物理的な距離の巨大さにおののく心はぽきと折れ、つまりはこの身を貫く太き自宅愛ゆえのホームシック。 同行の人間たちが息をのむ素早さで我が家を懐か…

夏目漱石『こころ』 再読の効能、じわじわっと。

夏目漱石の『こころ』を再読している。 初めて読んだ高校生のとき以来、『こころ』は何度か読み直している作品。 二十代のはじめ。三十代の半ば。 もはや覚えていないタイミングでの、数行の拾い読みも合わせると、好きな映画を折に触れて見直すような感覚で…

またワープしちゃった。

落ち着かない人生を送っている。 物理的にも、心持ち的にも。 ひとつの場所に腰が座るという事がない。 いつも重力とあやふやな関係を保ちつつ、ふわふわ漂っている。 そういえばこの間、ひさびさに数えてみたら、もう人生で18回も引っ越している。 実家を出…

2月5日の過去。

先の記事にて自己紹介のことを書きました。 差し当たって、2月5日はどんな作品を作ってきたのか、これまでの足跡をお見せするという形でご紹介に替えさせていただければと思います。 今回ご紹介するのは、劇場やライブハウスでお披露目したものが主です。 …

親切なアーティストを目指しています。

こんにちは。こんばんは。 2月5日です。 せっかくブログを始めたので、自己紹介をしようと思いました。 しかしいざやろうとすると、むずかしい。 何をどう切り取ってお出しすれば良いのか、皆目検討がつかないのです。 私はある人の勧めで「アーティスト」…

『熱血!マサチューセッツお味噌汁大学』

本日の講義はとてもエキサイティングなものになると確信しています。 人類の過去、未来、そしていま私たちが生きるこの現代を見つめ直すための 貴重なワークショップとなることでしょう。 お味噌汁が人類史において発揮してきた類まれなる功績について、 み…

父と時間

夏生まれの父は、喘息持ちの子ども時代を虫の声を聞きながら過ごしたという。 それはインターネットの誕生なんてまだ誰も想像してもいなかった、けれどそう大昔というほどでもない、昭和の時代の昔話だ。 その頃は夜も更けて家人が寝静まる時間になると、決…

りっすん、世渡り上手賛歌。

誰かを想うからこそ厳しくしてやらう、 そう思ってできる人は立派な人だと思います。 わたしはわるく思われてはいやです。 愛想笑いですませて、信用ならないやつだと軽く見られて、けれどやっぱり真実に愛情深くいることよりは、そちらの方がずっと良い。 …

太陽系カフェでの会話。

土星はもう、金星でいいのだと思います。 金星という、いっとうしょう、 みたいな名前で呼んであげるのが ふさわしいくらい、ぴっかぴか、の人気者なのです土星は。 理由はたんかんで、 ドーナツ×1と、みかん×1 で土星がこうせいされているからです。 ほん…

ようこそ人類、2月5日です。

ボンジュール、人類のみなさま。 2月5日です。 大きな木の見える窓のそばで、これを書いています。 あなたは一体どちらにいらっしゃるのでしょう。 不思議で見えない現代的な糸電話で、こちらとそちらが繋がっている事だけは確かですね。 ブログの題名にもな…