ようこそ人類、ここは地図。

私たちにおける、素晴らしい座標を

2017-01-01から1年間の記事一覧

遺失物をください。とても美しいやつ。

ここはいったい何処なのですか。 古い家の窓はまるで四角形のコマ割り。 私を人生に閉じ込めているこの直線を憎んでも 仕方ないので、何も思わない。 硝子障子の内側から、視線はビームのようにはみ出していく。 神様がくれた私の所持品。 小さな頭を気に入…

みらい平ゆみの誕生日。

名前はとても不思議なものです。 生まれてから死ぬまで、現代にっぽん人は、一生涯ひとつかふたつの名前を使い倒して生きていくのだ、というのが、私はにわかに信じがたい。 例えば男の子という種類に生まれると、余程のことがない限り人生を一色の、唯一絶…

森羅万象に優しいタイムマシーン制作室2

私は記憶。 地上の滅びたシーンたちが、私の中にまとまっている。 スケッチブックのように綴じられて。 あなたは時間。 私を切り取り、選り好んで、参照する。 美しいシーンを増やすのが、あなたの仕事。 そして私たちは人間。 世界を未来から過去へと変える…

愛の棒読み、おやゆびを削除。

口説かれるのは退屈。 もっと絶望してください。 自販機のぼたんをおや指で押すみたいに、 手に入れようとする。 無邪気だからやめて。 そんなしぐさは。 きっと不謹慎な人がすてき。 手のひらでこすって。 花を摘むかわりに、 永遠に取り消す。 安全地帯の…

けっこんしきをあげよう。

だいじょうぶ、 だいじょうぶと言う君の心臓が血液をこぼす。 殺してくれと鳴き叫んでも、もうだいじょうぶだよ。 殺すかわりに僕は愛す、きみもきみのじんせいも。

森羅万象に優しいタイムマシーン制作室

「優しさなんて、きぶんの問題。」 小学5年生の君が、宿題のドリルをめくりながら顔も上げずに言い放ったのは夏の終わり。 「大切なものが目に見えないなら、目って何のためにあるの。」 教訓を散りばめたフィクションに悪態をつくことを覚えて、すっかり反…

秋に離縁する夫との長電話。ソウルメイトって死語かと思っていた。

この秋に離縁する予定の夫へ久々に電話をかけて、夜通し無駄話をした。 無駄話と書いてはみたものの、それが本当に無駄なやり取りだとは露ほども思っていない。 持ち上がる話題やその広がり方がいちいち面白く、次の日もまたお互いに労働や勉学に勤しむ身で…

いつの世も愛は事件。大島渚『愛のコリーダ』

大島渚監督の「愛のコリーダ」を観た。 かの阿部定事件をモチーフにした本作は、日本的な極彩色の様式美を随所に散りばめた絵作りと、それを額縁のように引き立てる廓遊びの和の音色が美しい。 好奇をそそる男女の行く末を見届けるのにまったくふさわしい舞…

最果タヒさんのこと。『君の言い訳は最高の芸術』

この人も私と同じように、靴下をはいたり、歯を磨いたり、だれかと待ち合わせをしたりしながら生きているのだろうか。 食パンを焼きすぎたり、傘を忘れたり、ああなんか今日の髪型はイマイチ、とかそんなことを考えたりするんだろうか。 するんだろうな。 お…

美しいって、なに? 長野県東御市、天空の芸術祭

長野県東御市(とうみし)で行われている「天空の芸術祭」に行ってきた。 シェア・アトリエ「miraiva」のプロデューサー、mayuchapawonica・まゆさんの作品を観るべく。 まゆさんが相棒のカヤノヒデアキさんと手がけていたのは、『名もない農家』という場所…

「巨大な雨の読書会」、その1

名付けることは、存在の片棒を担ぐことでもある。 名を与えられた物は、者は、ものは、ものたちは。 おそらく自らの呼び名の来歴を知りたがるであろうし、仮に問うて名付けの由来について何がしかの回答を得たとすれば、繰り返しその中身を参照しつつ、生き…

作品名:「ときどき、透明になる家」

昨日10月8日にアート・イベント「ときどき、透明になる家を作ろう!」を開催し、ぶじに「ときどき、透明になる家」が完成しました。 完成した作品は展示作品として、下記の場所にてご覧いただくことができます。 「ときどき、透明になる家」展示地 :茨城県…

シェア・アトリエ「miraiva」

夏が終わる頃、踊りながら描きたいと思った。 ダンスと絵を描くことはあまりにも似ているから、わたしはそれを一緒くたにしないと気が済まなくなって、旅先の人や一度きり会った人や私を生み育てた人にまで、大きな大きなキャンバスをください踊りますから、…

世界が滅びてもいいなんて嘘つき。

世界なんて滅びてもよいの。 あなたとわたし、ふたりきり残して。 さっさと滅びてしまえ。 余白だらけになってしまえ。 完璧も片手落ちも曖昧も不透明も、 意味たちはすべて光になってしまうのが正しい。 風のように賢いあの人は。 風のように去ってしまうあ…

10月8日、イベント詳細です。

先日お知らせしました「ときどき、透明になる家を作ろう!」のイベント申込ページができました。 イベントの詳細情報も載せておりますので、お時間ございましたらご覧下さいね。 2月5日による、参加型アート・イベント 「ときどき、透明になる家を作ろう!」…

泡立つコミュニケーション、限界が好き。

限りあるもの。 それは、面白く、切なくて、愛おしい。 終わりや範囲が決まっていることで、その内側の内容物はそこからはみ出さんと煮え立ち、ひとりでに踊り、極まっていく。 「ここまで」と定める限界線の周りには、湖の岸辺にたえず水が打ち寄せるがごと…

ときどき透明になる家を一緒に作りませんか?

アートイベント 『ときどき、透明になる家を作ろう!』のお知らせです。 先日、アムステルダムに住む友人の建築家から面白いペンキをもらいました。 彼いわく、 「これを塗ると、ときどき建物が透明になるんだ。僕は試したことないけどさ。オランダのアーテ…

戯曲『電車という病』

タダシ 「ぼくの姉は電車病です。 とりつくしまもないくらい。 電車病というのは、あ、姉貴どこいくんだよ。 姉 「きまっているじゃない、タダシ。 線路を走りに行くのよ。 タダシ 「こんな夜中にあぶないだろう。 姉 「ばかね、試運転できるのはこの時間し…

わたしが雨を好きなのは。

あさ起きて、まどのそとが雨の音にみたされていると、 ふと、思い出すのです。 わたしのこのうつくしい孤独を。 この世界において与えられた、私というひとつの小部屋。 その場所は、どんなふうにはげしく、雨が降りつづけたとしても、 湯気ひとつたてずに、…

めくじら

あんにょん。 目くじらを立てている人が南にいるというので、会いに行くとそれは事件。 巨大な海の生き物が、その人の瞳にぶすと突き刺さっている。 だいじょうぶなのですか。 くじらをなでなで触りながら私が質問すると、 あまりだいじょうぶではありません…

透明なくらし

ゆふがた きっぷをてにつかれたおかおで おつとめからかえっていらっしゃる かえるあなた よくしつをあたため おゆうしょくのしたくをして かみをとかしてからえきまで えきまであなたむかへにいって きえさるわたくし えきからのさかみち くだりながらとぼ…

マジカル・リサイクル・サービス

マジシャンになりたいと思ったことは一度もない。 タネとしかけを育てるのにずいぶん骨が折れると子どもの時から聞かされていたし、ほとんどお手本に近い失敗例を間近に見ながら育ったせいだ。 僕のパパンは生まれて1時間もたつともうマジシャンになると言い…

大名庭園、お着物道を通りゃんせ。

まあこう見えて、あたしはこわがりやから、世の中にはこわいことってぎょうさんあると今まで思ってたんよ。 せやけどな、ほんまにおそろしくて、足ビビビってすくんでまうような、そんなおっとろしいもんなんて、そうそうあらへんねやってあたし、こないだ分…

幽体離脱の父。

困っているのは、ほかでもない 私の父のことなのです。 いったい、いつから始まったのか、 私もくわしく知りません。 よくよく記憶をたどってみれば 確かに、赤いランドセル。 わたしが九九を習うころ 事態はすでに あのすがた あのころ わたしが恐れたもの…

宇宙人のきもち。

宇宙人のきもち、を考えるときの私は、 だいたい地球人のきもち、を考えてしまっているのです。 宇宙人のきもち、を考えるときのいちばんのちゅういは、宇宙人は地球人にあらず。 そのことをちゃんと、よくよく、考えること。 それにつきるのだ、とファミマ…

発明の国、ヒラメキア円卓会議。

紫陽花型の爆弾を作ろうと思ったけれど 紫陽花というのはたちまちに滅びて ピカピカとはしておられぬ性質らしく 紫陽花型の爆弾を仕掛けたところで 爆発までのしばしの期間 ちっとも枯れていかぬのは 怪しいぞ怪しいぞなんて 顔を覆いたくなるほどに怪しまれ…

ぼくは供物。

お兄さんがもうだめだらうと言うので、僕はあきらめてしまいました。 今までのようにおもてを出歩いたり、お友達に会ったりすることもせず、昼間でも部屋を暗くして、鼻をほじったり、コップの水をぶくぶくと吹いて、あとは始終あおむけになって天井ばかりを…

良くも悪くも記憶に残る基礎挨拶講座その1。

とっても元気な小中学生、そして日本全国の大人のみなさん。 挨拶はすべてのコミュニケーションの基本です。 さっそく以下の例文を参考に、人様の記憶に残るステキな挨拶人を目指して練習してみましょう。 大きな声で、ご一緒に! ●朝ごはんを食べる前に 「…

男、はじめました。

梅野さやかさんはつい最近、暦が春へと移ったのをきっかけに煙草をやめて、かわりに男と寝ることをはじめました。 はじめたばかりのころはジッポライターの油の香りやマルボロメンソールライトの美しい翡翠色のパッケージが恋しくて恋しくてたまりませんでし…

平成家族賛歌。私は家族が大好きです。

おとうさまが押入れの中で憲法を読み上げていらっしゃるあいだ、 おかあさまはお風呂場で、お皿を千枚割りました。 おにいさまがまだ温い食べものを捨てた土の上に、 おねえさまがぴかぴか光る指輪の種を蒔いて育てています。 素敵な家族をもう一度、みなさ…