ここはいったい何処なのですか。
古い家の窓はまるで四角形のコマ割り。
私を人生に閉じ込めているこの直線を憎んでも
仕方ないので、何も思わない。
硝子障子の内側から、視線はビームのようにはみ出していく。
神様がくれた私の所持品。
小さな頭を気に入っています。
ほとばしるビームも。
死んだ人たちのために、張られた美しい床材。
そこに積もる過去を私はときどき片付ける。
誰が描いたのですか。
へたくそな嘘の夜空。
めずらしい画びょうみたいに、星がびかびかと刺さっている。
ここはいったい何処なのですか。
誰かと一緒にいたような気がしているのに。
それはきっと気のせい。
だって証明書がないからです。
もはや私は夢の話する人。
だから泣いてしまうのです。
あの毎日は本当ですか。
ちゃんと存在しましたか。
雨が降ったら溶けてしまう。
泥になって溶けてしまう。
生活なんて、ふたりでいることなんて。
所持品に加工してください。
私たちの日々を。
お守りか何かみたいに。
キーホルダーに鍵と一緒につけて。
指で触れることができるように。
たしかに二人でいた証拠を、
いつか失くしてしまえるように。