おとうさまが押入れの中で憲法を読み上げていらっしゃるあいだ、 おかあさまはお風呂場で、お皿を千枚割りました。
おにいさまがまだ温い食べものを捨てた土の上に、 おねえさまがぴかぴか光る指輪の種を蒔いて育てています。
素敵な家族をもう一度、みなさまのお顔をもう一度、 ぜひとも懐かしみたくて、自分の目玉をこしらえようと、わたしは重たい土の下、おはじき集めに必死です。
もう何年が過ぎたでしょう。
いったいどちらにあるのでしょう。
朱色のまじったあの丸いやつ。
ぼってり大きな白いやつ。
棺の中の手の中に、従妹がそっと握らせた、 わたしの大事なおはじき袋。
目玉のかわりのガラス玉。
どこにも見つからないのです。
どなたも遊んでくれません。
さびしさだけが増えました。
恋しや、わたしの家族さま。