ようこそ人類、ここは地図。

私たちにおける、素晴らしい座標を

お願い

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お願いがあるのだとあなたは言って、
覚えていてほしいのだと彼女に生餃子を押し渡す。

彼女はまだ仕事中で、雪の散る商店街の黒く冷たい
墓石の道にその足が埋められているのです。
彼女の23センチの右足と23・5センチの左足は。

何を?覚えているべき?わたしは?とたずねる前に
彼女は生餃子の入ったプラスチックの容器を、
平べったい昆虫みたいな形のその透明な容器を、
ぐしゃりと濡れた地面に落として、


の形に口を開いて人形みたいに固まってしまう。
血が凍る彼女の指先にはポケットティッシュ
あの素晴らしいあなたの伴侶、がビニルに包まれて
真四角く上品に抱かれている。
それはとくに彼女の大切なものではないのだけど、
ポケットティッシュは。けれど彼女は仕事として
それを配らなくてはならないのです。
見知らぬ人たちに。


だから、
彼女の仕事のすきまに生餃子を差し入れるなんて
非道はやめてあげてちょうだい。


そういうお願いをわたしがしたことを、
覚えていてほしいの。
あなたがいつも好きだという、生餃子をいまあげるから。

お願い。