今年の冬にやっていたドラマ『カルテット』を夢中で見ていた。
面白くて。
内容は、バイオリン、チェロ、ヴィオラといった弦楽器を奏でる男女4人の物語で、キャストも松たか子、松田龍平、高橋一生、満島ひかり、という手堅く色っぽい顔ぶれ。
(途中からクドカンも参戦し、出演者だけでも無敵の布陣)
洒脱なセリフの応酬を交えつつ、音楽という共通言語で結びついた4人の人間模様を、軽やかに細やかに描いた良作だった。
そんな『カルテット』の主人公のひとりで、チェロを演奏している満島ひかりさんの佇まいが、ドラマの中でもそれはそれは印象深く。
小鳥のように華奢な満島さんが巨大なチェロケースを背負って歩く姿が画面に映るたび、美しいそのアンバランスに私はいつも心奪われた。
そしてドラマが終わってからも、印象は残り続けて。
いいないいな、私も弓で楽器を弾いてみたいな。
そう思うようになった。
冬が終わり、新しいドラマが始まった、そんなある日。
我が家に「ニイハオ〜!」
とつぜん二胡がやってきた。
二胡というのは、上の写真の楽器。
弦はたった2本。
それを馬の尻尾の毛でできた弓で弾く。
黒檀や紫檀でできた本体にはヘビ皮が貼られており、ちょっと三味線に似た雰囲気だ。
日本ではマイナー楽器のイメージの二胡だけれど、
「西洋のバイオリン、中国の二胡」
と言われるくらい、世界的にはポピュラーらしく、上海あたりじゃハーモニカやリコーダーの代わりに、小学生は音楽の授業で二胡の弾き方を教わるらしい。
(その眺めを想像するだけで、わくわくが沸騰)
その二胡が、どうして我が家にやってきたのか。
うーむ、くえっしょん。
やってきた理由を尋ねてみる。
すると二胡いわく、
「ヨバレタカラよ〜」
さあさあ早く弾いてみろ、と私に迫る。
チェロじゃないけど、満島ひかりじゃないけど、言われるままに弓を動かす。
と、音楽に関してど素人の私でも、しょっぱな悠久の時を感じさせる素敵な音色が!
そう。
音を出すだけならば、二胡は初心者に優しいようだ。
戯れに指でビブラートを効かせてみたりして、すっかり気分は上海在住・満島ひかり。
母ゆずりの音痴、ピアノ・アレルギーだった私が、生まれて初めて音楽で喜びを感じることができた歴史的瞬間だった!
と、そんなファースト・二胡体験から早くも数ヶ月がたった。
最近の二胡はと言うと、ちょっと気難しい。
エアコンをいれろ、とか言う。
中国人に会わせろ、とか言う。
もっと2人の時間が欲しいのに、とか言う。
なんだなんだ、急にわがままになってきたぞ。
そう思いながらも、なんせ相手は悠久の音色。
エアコンは強めにいれるし、中国人にも会いに行く。
もっと2人の時間といっても、そばに置いておくだけじゃダメらしい。
もっと構ってくれ、というリクエストだ。
とりあえず、がんばる。