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内田樹『困難な結婚』 自分と離婚する方法。

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タイトル買い!内田樹『困難な結婚』

バツイチ、シングルファーザーにして、信頼のおける現代の語り部。

内田樹さん。(現在は再婚されているのでシングルじゃないけど)

 

政治から宗教からカルチャーまでを幅広く網羅する内田さんが「結婚」について語る。
しかもご自身の体験談を交えながら。

そそられる!

 

『困難な結婚』

見事な、このあまりに見事なタイトルが、憎い。憎いよ!内田さん!

 

というわけで、「結婚、離婚を経て、再婚。」
世間的にもよくある私の個人的なプロフィールではあるのだが、現在に至るまで辛くて文字には書き起こせない、涙なしには語れないアレコレがあった。だから現在進行形の結婚生活に波風が立てば、いやでも「結婚」に対してあれこれ考えてしまう。


「離婚」

そんな2文字が日常的に浮かぶこともある。
(うーん、いけない)

さすがにまた「離婚」という選択肢を選ぶのもどうか。
そんな動機から本書を手に取ってみた。
(ん?深刻?)

 

「結婚は自分というファンタジーの墓場」

 

「結婚は人生の墓場だ」とか言われたりもする。
(最近はあまり言わないのかな)
本書を読んで、私はこの皮肉めいた言葉を案外悪くないなぁと思った。

というのも、この「結婚=人生の墓場」を内田流に言いほぐすと、結婚によって死ぬのは、「私、という超個人的な縄張り意識」であって、それが死ぬことで人間は成熟を遂げることができるんだよ、と何ともポジティブな解釈をされていたから。

この本では繰り返し「確固たる自分」だとか「本当の自分」なんてない、という事が語られている。それはつまり結婚を通じて「自分」というファンタジーとお別れしなさいよ、大人になりなさいよ、というメッセージである。

結婚はいわば、それまでの人生で築き上げた「自分」という堅牢な根城を解体工事する作業。そりゃあ困難だし、すんなりいかなくて当たり前。他人と離婚するのもそれなりに大変だけれど、自分と離婚する苦労に比べれば全然大した事じゃない。

 

自分と離婚する方法

 

リスクヘッジとしての結婚、結婚の公共性、結婚相手をどう選ぶか、家族とは何か。

この本に書かれているのは、汎用性の高い一般論やハウツーマニュアルではなく、
内田樹という個人の経験則に基づく「結婚観」であり「家族論」だ。

それでいて、そうかそうか、内田先生はそのように思っていらっしゃるのね、ほうほう、と軽く流そうとすると、
「離婚してもまた同じことが待っていますよ」
ぶすっと図星をつかれたりする。
(そうですね。私も薄々わかってはいました、と反省)

 

そそり立ったその自我を、ふにゃんと曲げてごらんなさい。メディアによって毒された、ファンタジーマインドをお捨てなさい。

それが、私が本書で学んだ内田師範からの教え。
困難だとは承知の上で、実践するのも悪くない。

(それにしても、夫婦における性生活については結構重要なファクターだろうに、そこで多くを語らず。そのボカシ加減がかえって生々しいとか思ったのは私だけだろうか)