ようこそ人類、ここは地図。

2月5日、ゆみの散文集。

マジカル・リサイクル・サービス

マジシャンになりたいと思ったことは一度もない。 タネとしかけを育てるのにずいぶん骨が折れると子どもの時から聞かされていたし、ほとんどお手本に近い失敗例を間近に見ながら育ったせいだ。 僕のパパンは生まれて1時間もたつともうマジシャンになると言い…

大名庭園、お着物道を通りゃんせ。

まあこう見えて、あたしはこわがりやから、世の中にはこわいことってぎょうさんあると今まで思ってたんよ。 せやけどな、ほんまにおそろしくて、足ビビビってすくんでまうような、そんなおっとろしいもんなんて、そうそうあらへんねやってあたし、こないだ分…

幽体離脱の父。

困っているのは、ほかでもない 私の父のことなのです。 いったい、いつから始まったのか、 私もくわしく知りません。 よくよく記憶をたどってみれば 確かに、赤いランドセル。 わたしが九九を習うころ 事態はすでに あのすがた あのころ わたしが恐れたもの…

宇宙人のきもち。

宇宙人のきもち、を考えるときの私は、 だいたい地球人のきもち、を考えてしまっているのです。 宇宙人のきもち、を考えるときのいちばんのちゅういは、宇宙人は地球人にあらず。 そのことをちゃんと、よくよく、考えること。 それにつきるのだ、とファミマ…

発明の国、ヒラメキア円卓会議。

紫陽花型の爆弾を作ろうと思ったけれど 紫陽花というのはたちまちに滅びて ピカピカとはしておられぬ性質らしく 紫陽花型の爆弾を仕掛けたところで 爆発までのしばしの期間 ちっとも枯れていかぬのは 怪しいぞ怪しいぞなんて 顔を覆いたくなるほどに怪しまれ…

ぼくは供物。

お兄さんがもうだめだらうと言うので、僕はあきらめてしまいました。 今までのようにおもてを出歩いたり、お友達に会ったりすることもせず、昼間でも部屋を暗くして、鼻をほじったり、コップの水をぶくぶくと吹いて、あとは始終あおむけになって天井ばかりを…

良くも悪くも記憶に残る基礎挨拶講座その1。

とっても元気な小中学生、そして日本全国の大人のみなさん。 挨拶はすべてのコミュニケーションの基本です。 さっそく以下の例文を参考に、人様の記憶に残るステキな挨拶人を目指して練習してみましょう。 大きな声で、ご一緒に! ●朝ごはんを食べる前に 「…

男、はじめました。

梅野さやかさんはつい最近、暦が春へと移ったのをきっかけに煙草をやめて、かわりに男と寝ることをはじめました。 はじめたばかりのころはジッポライターの油の香りやマルボロメンソールライトの美しい翡翠色のパッケージが恋しくて恋しくてたまりませんでし…

平成家族賛歌。私は家族が大好きです。

おとうさまが押入れの中で憲法を読み上げていらっしゃるあいだ、 おかあさまはお風呂場で、お皿を千枚割りました。 おにいさまがまだ温い食べものを捨てた土の上に、 おねえさまがぴかぴか光る指輪の種を蒔いて育てています。 素敵な家族をもう一度、みなさ…

ファンタジーについて。

ここに記すのはファンタジーについての記録だ。私の人生とそこに出てくる登場人物たちを飲み込んでいるファンタジーについて。その記録。備忘録。不正確かもしれない幾つかの出来事についてのごく個人的な私の感想と意見。分析のための分析。忘れないために…

紙の家

離縁をするにあたり、いろいろと新しくものを知る機会を得たのが、この若芽どきの収穫と言えば収穫なのでした。 五月雨式に片付けごとは増えてゆくのに、かえってぽかんと頭の中身を動かせないでいるような、そんな時間も多いもので、どんどん自分が底なしに…

葛藤を終える。その自由にメルシー。

生きる事はよく分からない。 その分からなさを時に心地よく、時に心地悪く、味わう事。 それが人の姿形と魂をもって、この世に在ることの醍醐味なのかもしれない。 半年ほど前まで、自分の生命や肉体や魂までも、「生活の安定」だとか「将来」といった漠たる…

作品タイトル『ホシナ』

作品タイトル『ホシナ』 スケッチブックにサインペンと色鉛筆で。

ハーレーダビッドソンに乗った修道女

この1ヶ月ほど、制御不能の夏休みを過ごしていた。 計画は頓挫し、もくろみは破れ、すべてに疲れ諦めた私は、 「ただ流されていこう」 そんな漠たる想いだけで、たくさんの人と出会い、思いがけない場所へと運ばれた。 はじまりは、一体どこだったのか。 も…

作品タイトル『ノウラ』

スケッチ作品『ノウラ』ノートに、ボールペンで。

めくるめく眩暈世界。わたしは船乗り。

この二週間ほど、めまいがやまず、まっすぐと歩けない。 いつも船の上にいるようである。 地面が揺れている。 しばしば地震が起きているのかと間違う。 居合わせた人に尋ねると、揺れてはいない、と答えが返ってくるので、嗚呼これはわたしの肉体だけに起こ…

僕らが旅に出る理由、オノ・ヨーコという人。その3

青森に心惹かれた理由の2つ目を考えていたのだけれど、結局理由というのは後付けかもしれない、などという事をふと思う。 恐山、下北半島、十和田湖、行方不明になっていた八戸のおじさん(野田秀樹の芝居のセリフに出てくる好きなフレーズ)、寺山修司、エ…

作品タイトル『キクナ』

作品タイトル『キクナ』 スケッチブックにサインペンで。

僕らが旅に出る理由、太宰治の青森。その2

大英帝国を差し置いて、どうして青森だったのか。 青森に興味を持ったきっかけは2つあった。 1つ目は津軽半島にある金木(かねぎ)という土地だ。 ここは作家・太宰治の生まれ故郷で、今でも生家の建物が残っている。 一応、前置きしておくと私は太宰治の…

僕らが旅に出る理由、行く先は青森。その1

「どこか遠くに行ってくればいいのに。イギリスとか。」 居候先で家主にそう言われたのは、たしか6月ごろのことだった。 当時の私はこの2年ばかり不慣れな賃金労働を続けた無理がたたって気力・体力ともに衰弱を極めており、ほうほうの体で会社を辞めて独立…

夏籠人間模様、解読絵巻

悩ましきことのつくづく。 ジパングは四季の国がゆえに葉月ともなると都市は砂と石と油の床にずぶと埋まりてどこもかしこも地獄に似た灼熱が常なり。 殊更に人の集うところ人肌くるみたるその温もりども密に集うがゆえに風神様も力及ばず微風そよがすに留ま…

ジュンパ・ラヒリ『停電の夜に』 彼女はシャッターを切る。

ジュンパ・ラヒリさんというインド系アメリカ人作家の短編集『停電の夜に』を、この2カ月くらいをかけて、とぎれとぎれに読んでいる。 内容は決してつまらなくはないのだけれど、一気に飲み干すような読み方ができない類の作品で、ひとつの話を読んでは何日…

20年間のドライブ、私たちの廃墟へ。

週末を利用して、弟と夫と三人で茨城へとドライブをした。 かつて父だった人とその新しい家族、そして私たち姉弟の祖母が暮らす田舎の家を訪ねるためだ。 父と会うのは数年ぶりのことで、4年前に夫となった相手を引き合わせることに私はあまり気乗りがしな…

今夜、音楽にのせてメルシーを。

嵐のように押し寄せる出来事はたましいを運び、また作ること、書くこと、が現在進行形の時間軸とぴたと寄り添う日々が始まっています。 物言うことが怖くなり、雲がゆく速度も、風がつくる模様も、この目には映らない数年間がありました。 そのすぎた歳月の…

村上春樹×市川準『トニー滝谷』例えば漫画のコマ割りをどうやって映像化するのか。

けっこう映画化されている村上春樹 村上春樹の小説は、短編・長編ともに何作か映像化されている。 私も全部を観たことはない。 映画館で観れたのは、『ノルウェイの森』と『トニー滝谷』だけだ。 それでもネットで調べてみると、1981年にはデビュー作『風の…

飽きることは心の新陳代謝。

ひととせの間に1つ2つ、何かに徹底的にのめり込んでは飽きる、という所業を爾来続けて生きている。なかば人生を賭けなんとする、のめり込みのその勢いに、他人様はもうその道の玄人かそうでなくともそこに近しいものを目指して私がその後も現実的にひた邁…

純粋電車行為におけるタブー

電車に乗ると不思議なのだ。本を読んだり、音楽を聴いたりしている人間はいくらでもいるのに、風呂に入ったり、熱心にラジオ体操をしながら電車に乗っている人間というのはまず見かけない。また、ガムを噛みしだく・飴玉をなめ溶かす・ペットボトルのお茶を…

人間は定型文をはみ出すし、はみ出してます。

どうして器や彫刻や、絵画、と呼ばれるものを人は愛でるのか。 合理性という観測地点から見れば、何の役に立つの、というその行為を人類史は延々と続けて、まだやっているのか。 ときどき、名画をそのプライスでしか鑑賞できぬ人に問われて、その人に何をど…

家族、店じまい。

ふたりの子どもたちが、家族という大きなひと塊から熟した実のようにほろりと巣立ち、アスファルトを持ち上げる緑が深々と繁る庭へと目をやれば、夢中でそこを駆け回っていた獣はうすく小さな白い骨の破片になって、もう動かない。編み合わされた2人の男女の…

食べられるカジノを作ることにした。

どうにかならないのか。椎茸の裏っ側は。も少しタフでいてほしい。椎茸の裏っ側よ。やけに細かい溝みたいなのがルーレットの円盤そっくりに規則正しくひしめいているんだ。椎茸の裏っ側には。そのくせ溝と溝とを溝たらしめている壁が象牙色にやさしくふわふ…