ようこそ人類、ここは地図。

2月5日、ゆみの散文集。

お弁当箱に核燃料が。村上春樹も三島由紀夫も。

恋人に勧められて日本の文学小説を読み始めたのは、15歳の夏休みであった。 初心者の私でも読めるだろう、と最初にレコメンドされた作品は、 三島由紀夫『仮面の告白』。 そして、村上春樹『ノルウェイの森』。 2作ともある意味リーダブルな作品ではあった…

面会の効用、渋谷の養老天命反転地。

5月中旬某日。 引きこもっている。 人間との対話に乏しい毎日。 茶店での注文やよろず屋での挨拶を除けば、話らしい話をしていない。 社会性という筋肉がこのまま衰えて戻らないのでは。そんな不安が芽生え、なかば無理やりに出かけてみる。 近隣の書店で行…

子を憎んでも、母。

親になる事とは、無縁で生きていくのだと思っていた。 命を預かり、守り、育むという仕事が自分の人生に舞い込むことを想像して楽んだ日もあったが、それはもはや遠い過去の話である。 改めて人生を振り返ってみれば、結局親になる事はいつも自分から遠かっ…

日々の腑分け、ギリシャ人のスープ

5月7日。 2月頃から首の調子が悪い。 歯磨き時のうがいの姿勢がもう辛く、読書の姿勢をキープするのも次第に困難になってきた。 整体やマッサージ店に足繁く通うも毎度「手に負えないですね」と重症であることを示唆されるのに飽きて、根本治療を決意する…

恩寵の五月、男たちは西に去る。

5月の連休も特に変わったことなく暮らしていた。 出来事らしい出来事と言えば、男たちが私のもとを去っていった。 そのくらいである。 行きつけの店が開かなかったり、家の近くまで人人が押し寄せてきて引かず、駅までの数メートルを移動するにも難儀したり…

三鷹、世界とバレリーナのための喫茶店。

中央線の高架工事ですっかり様変わりしてしまった他の駅と違って、三鷹駅はまだかろうじて昔の佇まいを残している。 それが私には救いのように思われる時がある。 小学生の頃、バレエのレッスンのために電車を乗り継いで、三鷹駅前の小さな稽古場にひとりで…

小説という肉体、抱擁のために

「小説」は現実の世界に足を踏みしめながら楽しむことのできるフィクション、だと思っている人も多い。 「小説」は物語で、謎解きで、歴史や世界を教えてくれる情報源。感動の装置。 世間では、広くそのように考えられているように思う。 この現実世界を構成…

命のための天気予報

猫は柔らかく、 肩は凝って、 春が折り返す頃なれば、 あちらこちらで花が散る。 あまねく全ての人たちと同じように、自分の未来も不透明で、そのこと自体はごくごく自然で詮無いこと。 そのように兆した不安を一度は白紙に戻そうと思いなしてみるのだけれど…

春を呪えば、これがデビュー。

年末頃から始まった小説をなんとか書き上げて、制作中の疲労をまとめて清算する毎日である。 三ヶ月間、延々と机に座りノートパソコンの鍵盤を弾き鳴らしていたせいで、首と背中を痛めた。 酒も煙草も阿片の類も遠ざけていたかわりに、飲食の回数は無駄に増…

遺失物をください。とても美しいやつ。

ここはいったい何処なのですか。 古い家の窓はまるで四角形のコマ割り。 私を人生に閉じ込めているこの直線を憎んでも 仕方ないので、何も思わない。 硝子障子の内側から、視線はビームのようにはみ出していく。 神様がくれた私の所持品。 小さな頭を気に入…

みらい平ゆみの誕生日。

名前はとても不思議なものです。 生まれてから死ぬまで、現代にっぽん人は、一生涯ひとつかふたつの名前を使い倒して生きていくのだ、というのが、私はにわかに信じがたい。 例えば男の子という種類に生まれると、余程のことがない限り人生を一色の、唯一絶…

森羅万象に優しいタイムマシーン制作室2

私は記憶。 地上の滅びたシーンたちが、私の中にまとまっている。 スケッチブックのように綴じられて。 あなたは時間。 私を切り取り、選り好んで、参照する。 美しいシーンを増やすのが、あなたの仕事。 そして私たちは人間。 世界を未来から過去へと変える…

愛の棒読み、おやゆびを削除。

口説かれるのは退屈。 もっと絶望してください。 自販機のぼたんをおや指で押すみたいに、 手に入れようとする。 無邪気だからやめて。 そんなしぐさは。 きっと不謹慎な人がすてき。 手のひらでこすって。 花を摘むかわりに、 永遠に取り消す。 安全地帯の…

けっこんしきをあげよう。

だいじょうぶ、 だいじょうぶと言う君の心臓が血液をこぼす。 殺してくれと鳴き叫んでも、もうだいじょうぶだよ。 殺すかわりに僕は愛す、きみもきみのじんせいも。

森羅万象に優しいタイムマシーン制作室

「優しさなんて、きぶんの問題。」 小学5年生の君が、宿題のドリルをめくりながら顔も上げずに言い放ったのは夏の終わり。 「大切なものが目に見えないなら、目って何のためにあるの。」 教訓を散りばめたフィクションに悪態をつくことを覚えて、すっかり反…

秋に離縁する夫との長電話。ソウルメイトって死語かと思っていた。

この秋に離縁する予定の夫へ久々に電話をかけて、夜通し無駄話をした。 無駄話と書いてはみたものの、それが本当に無駄なやり取りだとは露ほども思っていない。 持ち上がる話題やその広がり方がいちいち面白く、次の日もまたお互いに労働や勉学に勤しむ身で…

いつの世も愛は事件。大島渚『愛のコリーダ』

大島渚監督の「愛のコリーダ」を観た。 かの阿部定事件をモチーフにした本作は、日本的な極彩色の様式美を随所に散りばめた絵作りと、それを額縁のように引き立てる廓遊びの和の音色が美しい。 好奇をそそる男女の行く末を見届けるのにまったくふさわしい舞…

最果タヒさんのこと。『君の言い訳は最高の芸術』

この人も私と同じように、靴下をはいたり、歯を磨いたり、だれかと待ち合わせをしたりしながら生きているのだろうか。 食パンを焼きすぎたり、傘を忘れたり、ああなんか今日の髪型はイマイチ、とかそんなことを考えたりするんだろうか。 するんだろうな。 お…

美しいって、なに? 長野県東御市、天空の芸術祭

長野県東御市(とうみし)で行われている「天空の芸術祭」に行ってきた。 シェア・アトリエ「miraiva」のプロデューサー、mayuchapawonica・まゆさんの作品を観るべく。 まゆさんが相棒のカヤノヒデアキさんと手がけていたのは、『名もない農家』という場所…

「巨大な雨の読書会」、その1

名付けることは、存在の片棒を担ぐことでもある。 名を与えられた物は、者は、ものは、ものたちは。 おそらく自らの呼び名の来歴を知りたがるであろうし、仮に問うて名付けの由来について何がしかの回答を得たとすれば、繰り返しその中身を参照しつつ、生き…

作品名:「ときどき、透明になる家」

昨日10月8日にアート・イベント「ときどき、透明になる家を作ろう!」を開催し、ぶじに「ときどき、透明になる家」が完成しました。 完成した作品は展示作品として、下記の場所にてご覧いただくことができます。 「ときどき、透明になる家」展示地 :茨城県…

シェア・アトリエ「miraiva」

夏が終わる頃、踊りながら描きたいと思った。 ダンスと絵を描くことはあまりにも似ているから、わたしはそれを一緒くたにしないと気が済まなくなって、旅先の人や一度きり会った人や私を生み育てた人にまで、大きな大きなキャンバスをください踊りますから、…

世界が滅びてもいいなんて嘘つき。

世界なんて滅びてもよいの。 あなたとわたし、ふたりきり残して。 さっさと滅びてしまえ。 余白だらけになってしまえ。 完璧も片手落ちも曖昧も不透明も、 意味たちはすべて光になってしまうのが正しい。 風のように賢いあの人は。 風のように去ってしまうあ…

10月8日、イベント詳細です。

先日お知らせしました「ときどき、透明になる家を作ろう!」のイベント申込ページができました。 イベントの詳細情報も載せておりますので、お時間ございましたらご覧下さいね。 2月5日による、参加型アート・イベント 「ときどき、透明になる家を作ろう!」…

泡立つコミュニケーション、限界が好き。

限りあるもの。 それは、面白く、切なくて、愛おしい。 終わりや範囲が決まっていることで、その内側の内容物はそこからはみ出さんと煮え立ち、ひとりでに踊り、極まっていく。 「ここまで」と定める限界線の周りには、湖の岸辺にたえず水が打ち寄せるがごと…

ときどき透明になる家を一緒に作りませんか?

アートイベント 『ときどき、透明になる家を作ろう!』のお知らせです。 先日、アムステルダムに住む友人の建築家から面白いペンキをもらいました。 彼いわく、 「これを塗ると、ときどき建物が透明になるんだ。僕は試したことないけどさ。オランダのアーテ…

作品タイトル『ナムミ』

作品タイトル『ナムミ』 スケッチブックにサインペン、アクリル絵具、鉛筆で。

戯曲『電車という病』

タダシ 「ぼくの姉は電車病です。 とりつくしまもないくらい。 電車病というのは、あ、姉貴どこいくんだよ。 姉 「きまっているじゃない、タダシ。 線路を走りに行くのよ。 タダシ 「こんな夜中にあぶないだろう。 姉 「ばかね、試運転できるのはこの時間し…

わたしが雨を好きなのは。

あさ起きて、まどのそとが雨の音にみたされていると、 ふと、思い出すのです。 わたしのこのうつくしい孤独を。 この世界において与えられた、私というひとつの小部屋。 その場所は、どんなふうにはげしく、雨が降りつづけたとしても、 湯気ひとつたてずに、…

めくじら

あんにょん。 目くじらを立てている人が南にいるというので、会いに行くとそれは事件。 巨大な海の生き物が、その人の瞳にぶすと突き刺さっている。 だいじょうぶなのですか。 くじらをなでなで触りながら私が質問すると、 あまりだいじょうぶではありません…